新しい歴史の幕開け
平成26年4月より公立西知多看護専門学校として新しい歴史を刻み始めています。昭和62年に開設されたときから、今に至るまで校名が変わろうとも諸先輩方が築いてきてくださった歴史を大切にしていきたいと思っています。
私は、4月より校長になりました。実は、昨年、初めて看護学校に来て、やっと1年経ったばかりです。それまでは、ずっと臨床現場で働き、そのうちの10年ほどは病院内の看護教育全般が主な仕事でした。多くの新人看護師を含む看護師に出会い、様々なことを教えてもらいました。その経験が今の仕事に大変役立っていると思っています。臨床現場と教育現場をつなぐことができる仕事をしていきたいと思っています。
この校長談話は、毎月更新を目標にしていきます。その時々に学校で起こった事件(!?)や行事などについてお知らせしつつ、当校の魅力が伝わるように心がけていきたいと思っています。
新しい歴史の幕開けを迎えた今、このような立場でお仕事をさせていただくことに感謝しつつ、気持ちを引き締めて学生、教職員とともに頑張りたいと思います。
平成26年4月 公立西知多看護専門学校
校長 竹内(宮原)晴子
宣誓という儀式、同じ目標に向かって…
公立西知多看護専門学校として初めての宣誓式を5月7日に終えました。2回生27名の方が宣誓されました。
誓いのことばは、次のようなものでした。このことばは毎年宣誓者が考えています。ですから、少しずつその学年のカラーがでるようです。
「私たち27名は、本日宣誓式を迎え、広く社会に貢献する看護師を目 指して次のことを誓います。
一、確実な知識と技術を養い、思いやりのある看護師になることを誓い ます。
一、人と人との関わりを重んじ、協調性のある看護師になることを誓い ます。
一、生命の尊さを知り、責任感と判断力を持ち、誠実に看護を探求し続 けることを誓います。
27名が声を揃えて、堂々と宣誓する姿は感動的でした。
誓いのことばにあるひとつひとつの言葉が非常に奥深いものであり、実習や学内での学びを通してその奥深さが実感できるように、誠実に看護を探求していってほしいと式辞でお話をさせていただきました。
宣誓式の後には自治会主催の祝賀会がありました。宣誓者ひとりひとりの思いが語られ、3年生はあたたかく、1年生は憧れのまなざしで見つめ、話を聞いていました。
2年生はこの宣誓式の後、5月13日より老人保健施設での老年看護学実習が始まっています。人生の先輩である高齢者との関わりを通して、様々な学びを深めてくれると思います。
3年生は八事病院で精神看護学実習をさせていただいています。精神に障害をもつ方と接することで、自分自身の看護者・看護学生としての在り様を見つめなおす機会にもなると思います。
1年生は学内で様々な講義を受け、空き時間には積極的に実習室でシーツ交換の練習をしています。今の努力の成果が技術試験でみられると期待しています。
学年は違えども、目標は皆同じ、つまり同志です。支え合い、助け合いながら、新しい学校の歴史を創っていっていただきたいと思います。
平成26年5月 公立西知多看護専門学校
校長 竹内(宮原)晴子
初めての新入生春合宿、そして3年生各論実習再開!
5月30日、31日に新入生対象春合宿を行いました。2年生、3年生の中には私たち、僕たちもやりたかった!行きたい!という人もいました。うらやましいと思われた1年生30名が2日間過ごしての感想をアンケートに書いてくれました。その中のいくつかを紹介いたします。
「とてもハードな2日間でしたが、確実にクラスの仲が深まったと思います」
「2日間、楽しくみんなで過ごせました。でも少し日程が詰まりすぎていてハードでした」
「代休が欲しい!」…という意見も何名かからありました。
担当担当教員3名も初めての取り組みでしたので、意気込みもあり、日程がハードになってしまったなぁと反省しております。(春合宿の様子はイベント案内のページをご覧ください)
しかし、合宿が終わった翌週の月曜日、ある非常勤の先生から「何だかクラスが明るくなった感じ。質問も出てきたし…」というお褒めの言葉をいただきました。
今回の合宿の目的は「3年間の学びを始める時期に、学生便覧を中心に学ぶ姿勢、具体的な学習方法を確認するとともに学ぶ仲間としてクラスメートとの親交を深め、様々な課題に協力して取り組んでいくことのできるチーム力を高める」というものでした。ですから、前述した先生からの言葉は担当した教員にとって大変うれしいものだったのです。今回の反省を踏まえ、来年度は更にバージョンアップして臨みたいと思っています。
そして、2年生は基礎看護学実習2に向けて学内での学びを深めているところです。3年生は6月3日から各論実習3クール目に突入しました。新しい実習先で緊張しながらも学びを続ける姿勢は微笑ましく、誇らしく思います。
平成26年6月 公立西知多看護専門学校
校長 竹内(宮原)晴子
6月の最初の土日に私と教務主任の2人で笑いヨガリーダー養成講座に参加してきました。笑いヨガとは、だれにでもできる健康体操です。笑いの体操とヨガの呼吸法を合わせているので『笑いヨガ』と言います。インド人の医師であるマダン・カタリアが5人から始めたものが今では世界70か国以上に拡がっています。
私が大学生のころ、臨床場面での笑いの効果について研究を行いました。それは笑いが免疫力をあげるという書籍に出会ったことがきっかけでした。私自身は臨床現場で患者さんの笑顔を見ることが大好きで、そのためにいろいろなことを考えていました。ですから、そのころはユーモアが大切とも考えていました。
しかし、笑いヨガは体操ですからユーモアは必要ありません。体操として笑っても、おかしさを感じて笑っても、身体は区別ができないので同じ効果があるという科学的根拠があるそうです。
そして、先日3年生の体育の時間に笑いヨガを実践させていただきました。学生たちは照れながらも、素晴らしい笑顔をみせてくれました。実習の合間のほんのひと時でしたが、リラックスして楽しい時間が過ごせたかなと思っています。その後も校内で会う学生たちは私の顔を見るたびに笑いますが、その笑顔もまた私を元気にしてくれます。
看護学校での勉強はとても大変です。それでも、笑顔あふれる学校になるといいなぁと思っています。
平成26年7月 公立西知多看護専門学校
校長 竹内(宮原)晴子
カリキュラム会議
今年度より公立西知多看護専門学校として生まれ変わった我が校は現在、教育理念から教育目標、そしてそれに基づいた教育内容・教育方法を見直そうということで教員全員で話し合いをすすめています。
話し合いの過程において、それぞれの教員の学生に対する思い、看護に対する思いがあふれ、立ち止まったり、進んだりの繰り返しの中、お互いの理解が深まっているように感じます。常日頃は日々の授業準備や実習指導などに追われ、なかなかじっくりと腰を落ち着けて話し合うことは難しく、今回のような時間をとることは非常に大切なことだと実感しています。
今までの伝統を大切にしつつ、新しい学校として、特色ある部分を出していきたいと考えています。卒業生と関わる多くの方に「公立西知多看護専門学校の卒業生は…」と、いい意味で語っていただけるような教育を実践したいと思っています。
私自身は自分の担当する科目において、TBL(Team-Based Learning)という学習方法を現在取り入れています。チーム基盤型学習というものです。最終的にチーム課題としてディベートを行ったのですが、その学びは非常に大きかったと感じました。各チームは本当によく調べ、自分たちの考えをまとめ、人に伝える方法を考えることができました。本来なら行わないであろう聴衆からの質問もでるような、とても楽しく刺激的な時間を過ごすことができました。私は学生の持っている力のすごさを感じ、本当に嬉しく思いました。学生の持っている力を信じ、それを最大限に引き出すようにこれからも関わっていこうと思える体験でした。
今年度は、それぞれの教員が少しずつ新しい取り組みにチャレンジしています。今話し合っているカリキュラムの見直しが終わり、実際に取り組んでいる新しい取り組みの反省点を活かし、来年度は更にオリジナリティに富んだ、当校ならではの看護教育が実践できることをめざしたいと思います。
平成26年8月 公立西知多看護専門学校
校長 竹内(宮原)晴子
夏休み
看護学校といえども、夏休みはあるよね…と思いきや、期間は小中高校よりも短い上に、宿題や技術の練習、国家試験の勉強、実習の事前学習などなど、課題は本当にたくさんあります。そのため、学生は忙しい毎日を過ごしていました。夏休み後半のこと、校長室のドアのホワイトボードの私へのメッセージ欄に「課題が終わりませ~ん」という悲痛な訴えが書かれていました。昨年度も同じような訴え(!?)があったのですが、その後の実習や学内演習のことを考えると大幅な削減は難しいという実情のようです。
大変な夏休みも過ぎてしまえば、いい思い出になると確信しています。そして、その大変さを乗り越えることができた経験は宝物になると思います。楽しかった記憶よりも大変だった記憶は残り、その大変さを経験したこと、乗り越えたことを誇りに思って語る…ということは本当によくあると思います。私自身、臨床で共に働いた仲間と会うと、必ずと言っていいほど、「あの時はスタッフが少なくて大変だったけど、みんなで頑張ったよね。」と語ることが多いからです。ただ単に辛い、大変というだけでなく、その後に生かされる辛さ、大変さであるように、常に見直し、必要な修正を繰り返し、学生への関わり方も考えていきたいと思っています。
さて、話題はがらっと変わりますが、今年度に入って地元の印刷会社ユーズさんのご厚意により(社長さんが私の出身高校の先輩であったこともあり)当校のイメージキャラクターをデザインしていただきました。複数のデザインから学生が選び、学生が命名しました。“フローレンスウメコ”といいます。知多市の梅に集うウグイスをモチーフに看護学生をイメージしたデザインになっています。フローレンスはフローレンス・ナイチンゲールのフローレンスです。とてもかわいいデザインで、この“フローレンスウメコ”と共に学校を盛り上げていきたいと考えています。
平成26年9月 公立西知多看護専門学校
校長 竹内(宮原)晴子
それぞれの秋
10月になりました。8月にお伝えしたカリキュラム会議は大詰めを迎え、最近は本当にお尻に火がついた状況だと自覚しております。しかし、話し合えば話し合うほど、より良い考えが浮かび、今現在で考えうる、成しうる最善のカリキュラムを考えられていると自負もしています。来年度1年生からこのカリキュラムを動かすことになります。そのための準備として12月までには、「課程変更申請」を行うことになります。このカリキュラムで学習した学生がどのような成長を見せてくれるのか、とても楽しみです。今の在校生にも新しいカリキュラムの良いところが波及することも考えていきたいと思っています。
さて、学生たちは…といいますと、1年生は初めての看護過程展開の演習を始めています。学生時代のみならず、看護師になった後もずっと基盤になる考え方がここで養われます。2年生は、先日知多警察署からの要請でシートベルト着用を勧める街頭活動を行いました。(様子はイベント案内よりご覧ください)この地域にある学校として、このような地域貢献は続けていきたいと思っています。3年生は、いよいよ各論実習6クール目に入りました。各論実習も終わりが見えてきました。国家試験の勉強も並行して行いながら、日々臨地での学びを深めている様子は、本当に頼もしく思います。
看護学生は3年間の学びのプロセスで「人間」や「人間関係」についての観察の仕方やその解釈がどのように変化していくのでしょうか?私は昨年度から、学校に来て学生の成長がどのようなきっかけで、どのように促されるのかについてとても興味を持つようになりました。今年度は、カリキュラム変更に追われましたが、来年度は何か研究に取り組んでみようかなと考えています。「学び続ける姿勢」を学生に期待するからには、自らモデルになれるように自己研鑽したいと思います。
平成26年10月 公立西知多看護専門学校
校長 竹内(宮原)晴子
看護研究
先月から看護学概論の中で「論文抄読会」を始めています。昨年度まではケーススタディと言われる雑誌投稿された学生の事例研究論文を1篇選択し、それを全員で読んでいました。しかし、今年度より私もメンバーに加わり、日本看護学会論文集の中から介入研究を4篇選択し、4グループに分かれて読み込むことにしました。読み込んだ結果を皆で話し合い、最終的にはグループごとに発表して学びを共有するという流れです。
実は、私は病院勤務時代、10年ほど看護研究の指導をしておりました。夜勤明けや休みのナースに研究指導をすることが多く、話しているうちに寝ぼけ眼で睡魔に襲われている彼女・彼らに対して、ひどい仕打ちをしているような気持ちになったものです。指導している私が「こんな思いまでして看護研究を現場のスタッフがやらなくてはいけないのか?」「こんなことをして意味があるのだろうか?」と何度も思いました。しかし、研究を終え、院外で発表したり、認定看護師の教育課程に進んだナースからは「あの時の学びが大変役に立った」「達成感があった」という言葉も聞かれました。そんな言葉を聞くたびに「私のやっていることも無意味ではないかも…」と思っていました。しかし、臨床の場で研究をするということの過酷さも実感し、専門職として研究を続ける必要性を自覚しつつもどのような取り組み方が適しているのか、答えが出せないままでした。
そんな経験をもつ私が看護専門学校で看護研究について担当することになったとき、「自らが研究する」という段階まで至らなくとも、「研究結果を活用する」ことができる段階までは育てたいと思うようになりました。
2年生の学生と学びを深めている段階ですが、皆、とてもよい気づきをもち、自由に語り、学びを深めている姿をみると本当に嬉しくなります。「あ、そういうことだったんだぁ、気づかなかったぁ」と目をキラキラさせている姿は、元気を与えてくれます。彼女、彼らが看護師になったときに先輩方の行った研究を批判的に読み、活用することができるようになり、いつか自分も研究してみたい!と思ってくれるようになることを夢見ています。どうせやるなら、楽しく!前向きに!と何事にもそんなスピリットで臨める卒業生を送り出したいと思っています。
平成26年11月 公立西知多看護専門学校
校長 竹内(宮原)晴子
議会、予算査定、監査
私は今年度より校長になり、議会や予算査定、監査などに参加するようになりました。組合管理者である東海市長さん、副管理者である知多市長さん、両市の副市長さんには大変お世話になり、いろいろなことを教えていただきながら、日々仕事をすすめています。これは、病院勤務時代にはなかったことで様々な発見があります。今回は、そのことについてお話ししたいと思います。
まずは、“形式美”についてです。発言をする際には挙手し、「議長、看護専門学校長」と名乗り、「看護専門学校長」と指名を受けてから発言します。今まで参加した会議では、このようなことは経験したことがなく、規律性を感じ、緊張感をもつ瞬間です。内容が充実していれば、形式にこだわらなくてもよいとずっと思ってきましたが、会議の流れを作り、他者からみてその流れが理解できるということの意義も実感しています。
次に、予算の重要性です。病院勤務時代には、恥ずかしいことに、今ほど予算について重要視していなかった自分がいます。事務部門が予算を策定し、それに基づいて事業を行うものの、年度途中であろうが必要なものは購入することが可能でありましたし、必要だと思う研修には積極的にスタッフに参加を促していました。随分、事務の方にご迷惑をおかけしていたと今更ながらに反省しております。現在は、その時とは異なり、何事も計画的に必要なものは予算上にあげていく…そんな当たり前のことを粛々と行うようにと心がけています。とはいえ、学校運営上、予想だにしなかったことが起こることもあります。そんな時は、学校運営委員会の場などを利用して副管理者をはじめとする委員さんに相談させていただき、その対応策を練ることもあります。お陰様で、地域に貢献できる看護師を育てることを目的とする我が校への理解は篤く、大変感謝しております。
最後に議員さんの存在です。学校運営への監査的な役割から、その在り方についてのアドバイザー的な役割まで非常に多くのサポートをいただいております。「頑張ってね」と声をかけていただくことで、元気づけられることもしばしばです。
看護師でありながら、現在は学校運営上の管理者として、様々な役割を担う中で「学生にとってより良い学習環境を目指す」ことを第一に、そのためにも「教職員にとってより良い職場環境を目指す」ことも念頭に日々努力していきたいと思います。
平成26年12月 公立西知多看護専門学校
校長 竹内(宮原)晴子
新しい年の始まり
皆様、新年あけましておめでとうございます。昨年、年女であったため、また新しい12年をどのように刻もうかと考えているところであります。縁あって、看護学校で勤務することになり、再び今までとは異なる方向から『看護』を見つめなおしている状況で学生と共に学び、育っていけるように…と思っています。
さて、「今年はどんな年にしたいのか」、ということについて考えてみますと、やはり昨年までと同様、学生や教職員にとって居心地の良い、刺激のある学校を目指していきたいという思いに行きつきます。
今年は特にアクティブラーニングという考えを根幹に、学生が自ら考え、学ぶことができるような教授方法を追求していきたいと考えています。看護専門学校は、看護師養成所指定規則に基づいて運営されており、3年間で3000時間以上の授業あるいは実習時間が必要とされています。何を学んでほしいのか、何を習得してほしいのか、どんな気づきをしてほしいのか…そんなことを考えながら、教える内容を吟味して時には思い切りよく切り捨てることも必要だと思っています。なぜならば、学習の仕方、学習したいという動機づけができれば、学生たちは自ら学習する力を持っていると思うからです。そして、共に学ぶ仲間としてチームワークを考えて行動することができること、このことも医療人として働く上での基盤として重要であると考えます。このような観点からも、TBL(Team
Based Learning)、グループワークなどを取り入れ、自分の意見を相手に伝える、人の話を聞く、皆で新しい考えを創造していく…そんな経験を学生時代にたくさんしてもらいたいと思います。
学生が笑い、涙し、時には激論を闘わせ、キラキラと輝く瞳をもって学生生活を送ることができるように、新年にあたり、夢を大きく膨らませ、教職員一同協力し、頑張っていこうと思います。
平成27年1月 公立西知多看護専門学校
校長 竹内(宮原)晴子
看護師としての思い出~Part1~
私が看護師として働きだしたのは、今から25年以上前になります。T市民病院の循環器内科・血液内科病棟で、看護師としての一歩を踏み出しました。短期大学出身の私は実習経験も少なく、ほとんどのことができない状態でした。その頃、病棟には難病で人工呼吸器を装着した若い患者さんのAさんが入院されていました。ある日、Aさんの部屋からナースコールが鳴り、訪室すると「痰をとってほしい」ということでした。私が「わかりました」と言って準備を始めるとAさんは露骨に嫌そうな表情をされました。私は心の中で「私だってやりたくない!」と思いながら痰を吸引しました。案の定、うまくとることができず退室した後、しばらくするとまたナースコールがなりました。先輩が気をきかせて「私が行くわ」といってさっと動かれました。
私は、痰をとることがきらいでした。苦しい表情をみるのが嫌だったからです。苦しい上に下手な私がやったら更に苦しい…ついついナースコールへの反応が遅くなってしまう自分がいました。そんなことを先輩に話した時に言われたことが今でもとても記憶に残っています。「苦しい処置だとしても、それをしなかったらAさんは痰が詰まってしまって、もっと苦しくなるか、命に関わることもあるんだよ。どうやったら少しでも楽に、しっかりと痰をとることができるのか、それを考えることの方が重要だよ。」看護師としての私が初めて自分の愚かさを実感した出来事でした。その後も、しばらくAさんには嫌な顔をされていましたが、徐々に普通に受け入れてくださるようになりました。
看護師としての思い出シリーズ(何回続くか???)の初回に、大変恥ずかしいお話をしましたが、今でもこの経験は自分自身を戒めるものになっています。目先のことから逃げるのではなく、物事の本質を考えて行動すること、患者さんにとって嫌な事でもやらなくてはいけないことはきちんと説明して実施すること、嫌なことはなるべく嫌になる状態が少ないように知識を深め、技術を磨くこと…などなどです。『本当の優しさとは何か?』ということを考える機会にもなりました。患者さんを学生に置き換えると今もこの時の学びが活きていると思います。
看護は自分自身も成長させてくれる職業だと思います。私自身の経験とそこから得た学びをこれからも少しずつ紹介していきたいと思います。
平成27年2月 公立西知多看護専門学校
校長 竹内(宮原)晴子
いよいよ年度末
病院勤務の頃から同じですが、年度末の忙しい時期になってきました。入学試験や国家試験も終わり、もうすぐ卒業式です。並行して入学式の準備や新年度の準備に追われる毎日です。しかし、大変だなぁと思う一方で、新しい学生を迎える喜び、特に来年度から新しいカリキュラムの運用を開始するので、そのワクワク感もあります。
そして、卒業生を送り出す寂しさと喜び、これは学校ならではのことだと思っています。本当に彼らは頑張りました。3年間、たくさんの講義、実習、それに伴う課題、自治会活動、様々な行事、いろいろなことを乗り越え、卒業するわけです。看護師になりたいと思って、入学したものの辛くてくじけそうになったこともあったでしょう。しかし、皆で助け合い、時には喧嘩をしながらも卒業を迎えるのです。当たり前のことかもしれませんが、私は誉めてあげたいです。それぞれの学び、それぞれの成長、それぞれの看護への思い…一人ずつ大切に抱えながら新しい道を歩み、看護学校で学んだ経験を誇りにしてほしいと思います。そして母校を愛し、迷ったり、苦しんだり、嬉しかったり…そんなときには、是非学校に来てお話を聞かせてください。
私たち教職員は、これからも、卒業生に愛され、誇りに思ってもらえるような学校であるように努力を重ねていきたいと思います。
さて新入生の皆さん、今は入学前の勉強に励まれていると思います。これからの3年間は、とにかくあっという間です。毎日毎日の積み重ねが3年後の自分をつくります。今は、毎日勉強する習慣と規則正しい生活、そして体力をつけること、この3つのことを是非とも実践していただきたいと思います。この3つのことは3年間を有意義に過ごすために大切なことです。新しく2年生、3年生になる先輩と教職員一同皆さんに逢えることを楽しみにお待ちしています。
平成27年3月 公立西知多看護専門学校
校長 竹内(宮原)晴子
3年目の春
私が当校に来てから3年目の春を迎えました。2年前、私が学校に来た時に入学した学生も3年生になります。いろいろなことがありました。
この3月末に、第1回生が国家試験全員合格という結果を受け、飛び上がるほど嬉しかったことが最近の大きな出来事です。学校名が変わり、初めての卒業生であり、大きなプレッシャーの中、本当によく頑張ってくれました。
そして、ほぼ2年をかけて検討してきた新しいカリキュラムが今年度より始動します。新しいカリキュラムの柱は「社会人基礎力」「倫理」です。社会人基礎力、倫理観を高めるために、グループワークやTBL(Team-Based Learning)などの方法を用いたアクティブラーニングを積極的に取り入れていきます。
自ら考え、行動し、チームの仲間と協働できる、そんな看護師を育てたいと強く思います。まずは、昨年度から始めた新入生対象の春合宿で、これから3年間共に学ぶ仲間と親交を深め、学ぶ姿勢をつくっていきたいと思います。こんな決意表明をこの1年で何度もしたなぁと今更ながらに振り返っています。
さて、話は変わり、昨年度の卒業式について報告があります。公立西知多看護専門学校として初めての卒業式で、校長表彰(当校のイメージキャラクター名からフローレンス・ウメコ賞と命名)を実行しました。学業成績優秀で学校生活においても他の模範となった学生1名を表彰しました。写真はペナントをつけて代々引き継ぐトロフィーですが、受賞者には氏名を刻印した同型のちょっと小さめのトロフィーと賞状を授与しました。サプライズで行ったため、卒業生、在校生、そして何より表彰される本人が一番驚いていたようでした。在校生にとって目標となる賞になることを期待しています。
看護師としての思い出~Part2~
私には、忘れられない患者さんがたくさんいます。新人の頃に関わった患者さんは既に亡くなられている方が多いと思うのですが、今でもフルネームと、その表情までも思い出すことができます。今日は、その中のおひとり、Nさん(70代男性)について紹介したいと思います。
Nさんは、いわゆる『ベテラン』の患者さんでした。糖尿病を患い、何度も入退院を繰り返していました。新人の私はたくさんのことをNさんに教えていただきました。慣れない採血でも、「できるまでやれ!」と励ましてくださるような方でした。
ある日のこと、私は先輩に強く注意を受けました。その頃の私は、新人とはいえ、ナースステーションから出るときには、患者さんに落ち込んでいることを悟られないように、大きく深呼吸をして気持ちを整えるようにしていました。もちろん、そのときも大きく深呼吸をして、ナースステーションを出ました。そして、Nさんの部屋に行ったところ、「ちょっと散歩でもしようかな」と言われ、すっと立たれました。検温をしたいと思っていた私は、慌てて追いかけると長い廊下の一番端にある3人掛け程度のソファーに腰掛け、自分の隣を人差し指でちょいちょいと指さしました。私が、隣に座ると「あの先輩に怒られたんだろう。言い方がきついからなぁ。」とそっと言われました。私は我慢していた涙がこぼれそうになりました。どうしてわかったんだろう?と思うと同時にきっと自分では入れ替えたつもりの気持ちが表情にしっかり出ていたんだろうなぁと反省しました。そして、患者さんは、看護師の表情をとてもよく観察していること、『ベテラン』の患者さんは看護師の性格までも把握していることに驚きました。その後、Nさんの検温をして、たわいもない会話をしている頃には気持ちが楽になっていました。
看護師が患者さんに○○してあげる…という表現をよく耳にしますが、私は「あげる」という表現を避けるようにしています。患者さんは、しばしば「私はこんな風になってしまって、もう何の役にも立たない。あなたたちにも迷惑ばかりかけて…」と言われます。しかし、私は多くの患者さんと接して、本当に多くのことを教えていただき、時には癒していただき、励ましていただき、支えていただきました。だからこそ、「あげる」のではなく、「させていただく」という気持ちでありたいと思っています。
「マネジメント」
いよいよ4月から新しいカリキュラムが動き出し、新しい科目である「マネジメント」が先日終了しました。この科目は、1年生を対象として行う、1単位15時間の科目です。その学習目標は、「良質な医療を組織的に提供するために必要となるマネジメントの基礎を理解する」です。
では、具体的に何をしているか?といいますと、まずはクラスの運営理念を考え、3年間のクラス目標を考え、その後1年間の目標に落とし込みました。1年間の目標実現にむけての行動計画を立て、今は個人目標の提出待ちという状況です。つまり、目標管理を学生時代から経験するということです。
理念は、どんなクラスを目指したいのか?という問いを基にブレーンストーミングで様々な意見を書き出し、グループごとにKJ法でまとめました。グループ発表の後、「使命」「信条」「展望」という視点で意見をとりまとめ、最終的に次のような理念が出来上がりました。
■4回生クラス運営理念
1.新カリキュラムの中で看護師としての力を身につけよう。
2.笑顔を絶やさず助け合おう。
3.信頼される看護師になって、いつか皆で同じ職場で働こう。
いかがでしょうか?見事にどんなクラスでありたいのか、どんなクラスを目指すのかが表現されていると思います。
この話し合いの過程において、自分の意見を人に伝えること、相手の意見を聞くこと、意見が食い違った時に調整すること、皆が話し合いに参加できるような雰囲気を作ること、目標達成のための方策を考えること、組織を作ること…などなど実に多くのことを学ぶことができたと思います。
1年間の目標達成のための計画を立案する際に印象に残っているのは、計画案としてでた意見に対する「面倒だ」という発言でした。面倒であるということが、そのまま効率的でない、効果的でないということにつながるのかどうかということを考えることが大切だと思いました。「面倒」という表現ではなく、「時間がかかる割に効果が薄いと思う」と言ったらどうでしょうか?「面倒」という言葉は感情を表しているため、否定的に捉えられやすく、後者の方が意見を受け入れやすいやすいのではないでしょうか。
結局、「面倒」という意見が多かったこともあったため、最終的に中間評価までその案は実行せず、他の計画を実行して評価してみようということになりました。私は科目担当として、学生の意見を尊重し、サポートしていこうと思っています。早速、計画にあがった学内演習練習予定表や練習チェック表、課題提出一覧表などを事務の協力を得て作成してクラスに掲示しました。7月下旬の中間評価の時に、どのような結果がでるのか、クラスが3年間運営理念を大切に思い、どのような動きを見せてくれるのか、本当に楽しみです。
学生の力を信じ、見守ることができる教員でありたいと思います。
「新人看護師」
最近、昨年度の卒業生が時々学校を訪ねてくれることがあります。話を聞いていると自分の新人看護師時代を思い出します。とにかく、何もできなくて、わからないことばかりで、不安でいっぱいでした。実家に帰れば、泣いているか、寝ているかのどちらかだったと今でも母に言われます。今、思い出しても、とにかく辛かったという気持ちがいっぱいです。そんな中で、いつも助けてくれたのが、患者さんと同期の仲間です。患者さんは、私が行う、つたない看護ケアに対しても「ありがとう」と言ってくださったり、「大変だね、頑張ってね」と励ましてくださったりしました。そして、同期の仲間とは愚痴を言い合ったり、泣いたり笑ったり、時にはお酒を酌み交わしたりしました。勤務が終わった後、駐車場で2時間くらい立ち話をしたこともありました。今となれば、そのひとつひとつが良い思い出です。
その後、私も先輩と呼ばれる立場になり、多くの新人看護師に出会ってきました。私自身は、自分が新人であった時の気持ちを忘れないように…その時々で新人看護師の立場になって考えるように努力していたつもりです。特に前職では教育担当として関わる機会に恵まれ、新人看護師と話す機会が多くありました。その話が記憶に残ったためか、自分がまた新人看護師に戻って、仕事がうまく行かなくて病棟を走り回って泣いている夢をみて朝からひどく疲れたこともありました。
私が新人看護師だった時と比べて、今の新人看護師さんは本当に大変です。採血ひとつをとっても私が新人の時に必要とされた手順に比べいくつもの工程が増えているのです。医療事故防止が主な目的です。つまり、例えば10工程であったものが13工程や14工程になっているということです。10工程覚えて、そこから必要性を認識してひとつずつ工程を増やしてきた私より、最初から13ないし14工程を覚えなくてはいけない今の新人看護師の方が大変だと思うのです。
それぞれ、学んできた内容、経験してきた内容、人となり…違いがあって当然です。だからこそ、お互いに助け合って、それぞれの個性を大切に、より良い医療、看護の実現に向けて協力することができるような職場であるように、新人のときから自分のできることを実践できる看護師を育てたいと思っています。卒業生の皆さん、応援しています。時々は近況報告に来てくださいね。
「看護師としての思い出~Part3~」
今回も私の大きな転機とその頃に出会った大切な患者さんのお一人とその方からいただいた大切な言葉についてお伝えしたいと思います。私は看護師として4年間働いた後に看護大学へ編入学しました。3年目で退職を申し出たのですが、その年に退職する方が多く、何とかもう1年とどまってほしいと上司からお願いがあり、1年を過ごした後のことでした。当初は、3年間、臨床経験を積んだ後に養護教諭になるため、進学しようと考えていました。しかし、その延ばした1年間で、どうせ勉強するなら大学へ行って養護教諭の資格と保健師の資格もとりたいと思うことができました。今思えば、上司のお願いは私にとってとてもありがたいものだったのです。最後の1年で上司が異動になり、勤務していた病棟の看護にも変化がみえました。そのことが、私がその後「看護管理」を学ぶ大きな動機付けにもなりました。
4年間という決して長くない臨床経験でしたが、本当に様々な経験をしたので思い出も思い入れもたくさんありました。そして、勤務最後の日のことです。その当時受け持っていた患者さん(Tさん)のところにあいさつに伺いました。私が退職すること、進学することなどを話すと、Tさんは私の手を握り、「さみしくなっちゃうわ。でもね、お金や物は誰かが盗ろうとしたら、盗られてしまうこともあるかもしれないけれど、身についた知識は誰も盗ることはできないから…頑張って勉強してね。」と言ってくださいました。私は、握られた手をしっかり握り返し、うなづきながら泣いてしまいました。新しい生活への不安や期待、そして慣れ親しんだ職場や職場の仲間、大切な患者さんとの別れの寂しさ…いろいろな気持ちが入り混じっていました。
その後、大学へ編入学し、大学院へ学びを進め、多くの学びを得ることができました。共に学ぶ仲間との力の差に劣等感をもったことも、研究過程では進むべき方向が分からなくなり悩んだこともありました。その過程の中で、Tさんからいただいた言葉とその手の温もりを何度も思い出していました。
「今年の夏休み」
9月になりました。今年の夏は昨年、一昨年と違い、3学年そろっての夏休みはお盆の一週間しかありませんでした。学校の教員をしていると話すと「夏休みがあっていいね」「今は夏休み?」と聞かれます。実際には、教員は病院勤務時代と同じ5日間の夏季休暇を7月~9月の間にとらせていただくという状況です。しかし、例年ですと学生はほぼ1ヶ月間授業がないため、その間に教員会議を行ったり、研修に出たり、常日頃できないお仕事をしています。それが、今年は様相が違うため、何となく落ち着かない毎日を過ごしておりました。
そんな中、8月8日にオープンキャンパスを開催しました。午前と午後30名ずつの定員のところ、77名の応募があり抽選の結果午前33名、午後33名の方に来ていただくことになりました。当校のオープンキャンパスは、体験型のため人数制限をしており、抽選にもれた方には大変申し訳なく思っております。しかし、来ていただいた方には大変好評で「初めての経験をたくさんさせていただいてすごくこのオープンキャンパスに来てよかったと思いました。看護師になりたいという意志が強まりました。」「ここにいる先輩方々は、優しくとてもわかりやすく教えてくれてすごく良かったです。雰囲気も良く、すごく楽しそうな学校だと思いました。」などの感想をいただきました。学生がボランティアで参加してくれ、体験の指導をしてくれました。その中で自分たちの後輩になるかもしれない参加者に、とても丁寧に優しく接してくれた成果だと思っています。小さな学校だからこその魅力を伝えることができればと常日頃から思っておりますので、大変うれしい結果でした。
その後、2年生の基礎看護学実習2が始まり、9月3日で終わります。実際の臨床現場で患者さんと接し、看護過程を展開する(患者さんから様々な情報をいただき、その情報を分析し、看護上の問題を明らかにして看護として関わるべきところに関わり、その結果を評価し、再度問題を明らかにして…というプロセス)実習を行っています。今まで、講義などで学んできたことを生かし、自分の知識や技術、関わり方について見直すことができればと思います。実習が終わり、ひとまわりもふたまわりも成長した2年生に会えることを楽しみにしています。
「自己啓発」
「看護者は、常に、個人の責任として継続学習による能力の維持・開発に努める。」これは、2003年に日本看護協会が示した看護者の倫理綱領の15ある条文中8番目のものです。私は、もともと怠け者でこの条文を見るたびに胸に突き刺さる感覚を持ちます。今は教える立場にあるのですから、倫理綱領を体言する姿勢を学生に示すうえでも、自らが看護師として生きていくうえでも非常に重要な条文であると認識しているからです。
私が現在心がけていることは、わからないことをわからないままにしないように日々過ごすこと、そして声をかけていただいた自らの啓発につながるようなお仕事はお引き受けするということです。
9月には、公立西知多総合病院でラダー研修として「看護研究と倫理」の講義をさせていただきました。40名近くの受講者の皆さんに、どのように伝えようかと考え、現在愛知県看護協会の研究倫理委員会のメンバーとして倫理審査に関わっている経験をもとにお話しさせていただきました。臨床で働く看護師にとって看護研究をすることは大変な苦労であることは以前の校長談話でも紹介させていただきました。ですから、今回の講義自体も「是非聞きたい!」「楽しみだ!」と思っていただけるようなテーマではないと思いました。しかし、お話していると首をかしげてわからないことを表現してくださったり、うなづいて理解していることを表現してくださったり…そんな方が数名いらっしゃることで随分救われました。わかりづらい内容をいかにわかりやすく、伝えることができるかという点で非常に勉強になりました。
その少し後に、母校である聖路加看護大学で開催された聖路加看護学会に参加しました。前日の評議員会議からの参加になりましたが、大先輩たちの生き生きとした表情や会話に随分刺激を受けました。学会が法人化されたことによる変化は、新しい情報ばかりでとても興味深いものでした。そして「教育と実践のハーモニー」という学会テーマは、当校が母体病院との連携を図る上でとても参考になる内容ばかりでした。
また、シルバーウィーク後半には短大時代の同級生から依頼されて彼女の研究のお手伝いをさせていただきました。まさに臨床現場で行っている研究であり、そのお手伝いをさせていただくことは臨床で働く看護師さんへの応援になると思っています。お休み中で確実に「お休み」していた頭をフル稼働させてとても楽しい時間を過ごすことができました。
このような活動で「自己啓発」といえるかどうか、いささか疑問ではありますが、少しずつ私らしく目の前にいる人を大切に、これからも自らの能力の維持・開発に努めていこうと思います。
最後に…9月初めに里帰りデーを行ったご報告を少しさせていただきます。昨年度卒業し、現場で働く人を対象に里帰りデーを行いました。22名の方が集まってくださり、久しぶりの再会に笑いあり、涙あり、おいしいお菓子とジュースをいただきながら楽しい時間を過ごしました。今回初めての取り組みでしたが、終了後のアンケートではほとんどの人が役立ったと回答してくださったので続けていきたいと思います。大したおもてなしはできませんでしたが、それでも皆の笑顔に私自身が癒されました。ありがとう。
「看護師としての思い出~Part4~」
今回は、私が看護師になって初めて受け持ちをさせていただいたSさんとの思い出についてご紹介します。Sさんは多発性骨髄腫を患っている女性で腰椎の圧迫骨折を起こし、ベッド上で過ごされている方でした。私は初めての受け持ちということもあり、どのような関わりをしたらよいのか分からず、他の患者さんと違う関わりを特別にすることなく日々過ごしていました。
そんな時、先輩から「Sさんの受け持ちでしょ。何とかしてよ。トイレのコールが何度も何度もあるし、自分でできることでも自分でしようともしない!」と言われました。私は、先輩に怒られることが恐くて、とにかくSさんのところに行って何とかしなければ…と思いました。結果的に私がしたことは、Sさんと話し合い、Sさんが今できることをするように決めたということでした。具体的には、排泄後に陰部を自分で拭き、尿器を外すということをSさんにしていただくことになりました。Sさん自身、看護師に何度も迷惑をかけていると申し訳なく思っていたこと、そして自分でもできることをしたいと思っていたことなど話してくださいました。そうして、Sさんが『自分でできること』をし始めて、1週間ほど経ったころには、リハビリも進みコルセットをして歩行するほどに回復しました。これは自然の経過でもあると思うのですが、私が注目したのはSさんの表情でした。『自分でできること』をし始めてからのSさんの表情は明らかに変化してきたのです。「生きる力」「前を向く力」を感じました。先輩からの苦情で恐る恐る動き始めた私でしたが、Sさんはとても感謝してくれました。退院されるときには、「あの時、話をきいてくれて、一緒に考えてくれて本当に嬉しかった」と言ってくださいました。何だか、後ろめたいような気持ちもありましたが、嬉しくもありました。
後から振り返ってみれば、私は看護師としてSさんをエンパワメント(自らの力を自覚して行動できるようにサポートすること)し、セルフエフィカシー(自己効力感:自分に対する信頼感や有能感)を高める援助をしたことになったのだと思います。学生時代にもっと勉強していれば、もっと意図的にこのような関わりができたのだろうなと反省しています。今、看護を学んでいる学生さん達には、学んでいることを活かし、人に関心を持ち、意図的に関わることができる看護師になっていただきたいと思います。
ジョイント研修
私がファシリテーターとしてジョイント研修に参加させていただくことになって3年目となりました。ジョイント研修とは愛知県看護研修センターで行われているもので、受講者は看護師等養成所の教務主任等教育運営責任者と病院の新人看護職員研修責任者です。受講生が4つのグループに分かれて「看護基礎教育、新人看護職員研修を連携させた看護技術教育プログラムの作成」という課題に挑むのです。そして、私を含め基礎教育や新人看護職員研修にたずさわった経験のある4名のファシリテーターがそれぞれのグループに参加して目標達成をサポートするのです。ジョイント研修の「ジョイント」には、様々な意味が込められていると理解しています。教育と臨床の場をつなぐ、教員と新人指導者をつなぐ、学びとして学生時代の学びと臨床に出てからの学びをつなぐ…そうすることで臨床現場で必要とされる臨床実践能力と看護基礎教育との間の乖離をなくしたいという思いがあるのです。
1年目に参加した時には、私自身、様子がわからず、とにかく自分もグループメンバーの一員のような気持ちで参加したことを覚えています。講義による学びも含め8日間という期間、忙しい教育現場・臨床現場から離れて研修に来られている方たちです。何か獲得して欲しいと、ただただ焦っていたように思います。しかし、私の焦りとは裏腹に皆さん、着実に話し合いを進められていました。私が何かしなくても良かったのです。
そして、2年目。とにかく楽しく、そしてそれぞれの受講生が何かひとつでも自施設に持ち帰って役立てることができるように…ということを最初から打ち出しました。すると、それは、それは、とても楽しく、前向きに、たくさんのお土産をもって帰ることができた研修となりました。
更に、3年目。昨年と同様のことを皆さんに伝え、もうひとつ「今回、講義などで学んだことを活かしたプログラムにしよう」ということを伝えようと思っていましたが、伝え忘れてしまいました。しかし、最後にできあがったプログラムは実に見事なものでした。講義で学んだことをふんだんに盛り込み、もちろんお土産いっぱいでした。
この3年間のファシリテーターとしての関わりを通して、看護職の持つ底力と生真面目さを再認識すると同時に「信じて見守ること」の大切さも実感しました。ついつい、手や口を出してしまいがちな教育の場で、信じること、待つこと、支えること、そしてタイミングよく手を差し伸べることができるようになりたいと思います。
新年のご挨拶
皆様、新年あけましておめでとうございます。2016年になりました。私が当校へ赴任してから、今年で4年目になります。月日が過ぎるのは本当に早いものです。もう少しで、同期である3年生が卒業となります。その3年生は、現在、2月に行われる国家試験の合格に向けて勉強する毎日です。今年も100%合格を目指し、頑張ってほしいと思っております。
今年の抱負の前に、私が3年間看護学校で過ごしてきて感じていることから、これからの当校の目指す教育についての方向性を考えてみたいと思います。私が最も強く感じていること、それは学生の可能性を信じることの大切さと困難さです。この校長談話は、在校生からも卒業生からも「読んでますよ~」と言われているので、そのことを若干意識しながら述べていきたいと思います。
私が看護学部に編入学した時に、教育学の先生から「可能性は無限だと思うか?」という問いを投げかけられたことを覚えています。そして、教育とは、ほんの少しの可能性も見逃さず、そこに光をあて関わっていくことだとその時に私自身、解釈したことを覚えています。
実際に、看護学校で学生と関わる過程で、それが確信となっていく経験を何度もしました。私の想像を超える学びを獲得することもしばしばあります。そんな時、「やっぱり、すごい!」と思えるのです。しかし、逆にそんな思いが打ち砕かれることもあります。信じて待っても、そのまま「待ちぼうけ」になることもあるからです。そんなとき、きっと私の関わりのどこかが足りなかったのだろうと振り返りつつ、「学生としての権利と義務」についても考えるのです。私たち教員は、学生が学ぶことができる、学ぼうと思える環境を目指し続けることについて義務があり、学生は学ぶ権利と同時に義務もあると思うのです。その義務があることを自ら理解して取り組める学生と、そうでない学生、そしてそうではない時期にある学生がいるのです。教員は、「可能性を信じる」、このことだけはやめてはいけないと思っています。少なくとも、「信じている」「信じ続けている」ことを学生に感じてもらえるような教員でありたいと思います。そんな学生と教職員がいる「可能性にあふれた学校」をこれからも目指したいと思います。
長くなりましたが、今年の抱負です。今年は、技術教育の充実と実習記録の見直しに取り組みたいと思っています。どちらも既に少しずつ動き始めていますが、今までの取り組みを体系化し、新たな変化をもたらしたいと思っています。この校長談話の中で、その取り組みについて、少しずつご紹介していきたいと思います。今年もよろしくお願いいたします。
体験レポート発表会
1月22日に臨地実習体験レポート発表会を行いました。これは、毎年3年生が臨床で体験したことをレポートにまとめ、それを発表するものです。私自身は、この発表会に参加するのは3回目ということになります。今年は、レポート作成から関わっていたところが今までと違うところです。
年度初めにオリエンテーションを行い、その後、当校で国語表現法を教えていただいている先生の書き方指導などのご協力を得ながら、作成のサポートをしていました。中でも、今年は途中で一人ずつ面談することを取り入れました。書いてきたレポートを基に、「何をもっとも伝えたいのか」「主語・述語のねじれなどの文章表現に問題はないか」「誤字・脱字はないか」など、直接一人ずつにコメントしながら、考えを聞き、方向性を決めるお手伝いをしました。
実習、そして後半は国家試験勉強などで忙しい中、皆、本当に頑張ってくれました。中には、5回以上の提出、そして修正をして、より自分の思いが伝わる文章へと努力した学生もいました。発表当日にも、「発表の練習をしていたら、文章を入れ替えた方が伝わりやすいと気づきました。当日ですけど、修正して発表してもいいですか?」と聞いてくる学生もいました。
そして、発表会。皆、本当に立派でした。そして感動しました。母体病院の看護師長さんがお二人、参加してくださり、「自分の忘れかけていた気持ちを思い起こさせてもらった」といった感想をいただきました。私自身も毎年、この発表会に参加すると感動と刺激をもらうことができます。学生の持つ、柔らかな感性と芽吹いたばかりの看護への思いがあふれているからだと思います。
その3年生も今は国家試験受験に向けて正念場です。毎日、一所懸命に勉強しています。3月には皆の素晴らしい笑顔のもと、卒業式を迎えられることを切に願っています。
愛校作業
現在、3年生は、2月14日の国家試験を終え、3月4日の卒業式を控え、様々な愛校作業をしてくれています。これは、当校の伝統で毎年、卒業生自らが考えたり、教職員からお願いしたりして、学校の環境を改善するために様々な作業をしてくれます。今年は、門のペンキ塗り、門塀の苔取り、玄関先のタイル磨き、体育館のパイプいすの拭き上げ、各教室のブラインド拭き、実習室のベイスンや器材の磨き上げ、パソコン内の不要なデータの消去などなど、実にたくさんの作業を行ってくれました。
この作業を通して、3年生の成長を実感しました。愛校作業自体はもちろん教科外の時間となります。ですから、参加しなくても卒業はできるということです。しかし、今年の学生は私の見る限り、非常にバランスよく作業をしているなぁと思いました。途中で帰る学生、体調不良で休む学生はいましたが、全体に熱心に黙々と、しかも楽しげに作業をしてくれていました。私も、一緒に作業をしたのですが、本当に良い思い出になりました。「依頼されたこと以上の仕事をすることで感動が生まれるんだよ!」と無理やりパイプ椅子の入っている台車の掃除をしてもらったりしました。(「結局言われたから、やるしかない…」と言っていましたが…)
しかし、台車の掃除をしたことによって、体育館の床が埃で白くなってしまったのです。そこからは私のお願い(指示?)ではなく、まさに「依頼されたこと以上の仕事」として、床掃除が始まりました。そして、最終的には掃除前から気になっていた汚れも取り去り、ワックスがけをするに至ったのです。他の作業をしていた学生も加わり、皆で協力する姿がとても嬉しく、頼もしく、私の眼に映りました。
看護師になるための知識や技術を身につけることは、第一義的に大切なことですが、このような作業を通して身につける協働する力もとても大切なことだと思います。当校の目指す社会人基礎力と倫理観を高める教育のひとつの具現化であると確信しました。その場に共にいることができる幸せを感じつつ、とても素晴らしい時間を過ごすことができました。卒業生のみんな、ありがとう。