「令和5年度が始まりました」
学校周辺の桜が満開の中、令和5年度が始まりました。校長となって2年目を迎えます。昨年度は、前校長からバトンを受け、その責任の重さを感じる1年でした。そして私を支えてくれた教職員、元気をくれた学生たちに日々感謝する1年でもありました。
COVID-19に翻弄された日々もようやく元の生活に戻りつつあります。3月に行われた卒業式は、いろいろな規制がある中で、3年間辛抱強くがんばった卒業生に、少しでも思い出に残るような卒業式にしたいと教職員で話し合い、学生たちの希望も聞き入れながら思い出に残る式を行うことができました。そんな卒業生たちからは、今年も「看護師国家試験、全員合格!」という大きなプレゼントをいただきました。9回生の皆さん、ありがとう。
今年度は、新カリキュラムが始まり2年目となります。新2年生の授業ではより実践につながる演習など、新しい科目が始まります。現在、教員たちは、学び多い授業となるようチームで話し合いながら準備を進めています。
そして新たに12回生の皆さんを迎えます。新入生の皆さん一人一人が新しい出会いを大切にし、同じ目標を持つ仲間として、ともに支え合えるようなクラスになることを願っています。教職員一同、みなさんの学習環境が快適になるよう整えつつ、学生生活を楽しく送ることができるよう努めていきたいと思います。今年度もよろしくお願いいたします。
令和5年4月 公立西知多看護専門学校
校長 鰐部 貴久美
「本校の教育理念」
先日、学内で防災訓練が行われました。当日は、担任の先生がホームルームを行っているときに、地震と火災が発生する設定で実施しました。その後は、例年通り1年生が学内の消火器や消火栓の位置、危険な箇所の確認のためグループごとに校内を巡回しました。
今年は、昨年度の学生達からの意見を参考に消火器や消火栓に1文字ずつ文字をつけ、14か所すべての文字がそろい順序を変えていくと、次のミッションが出てくるように準備をしました。そしてそのミッションに従っていくと、最後は校長室でミッションを終了という、ゲーム感覚で校内を回ってもらいました。
学生たちは、なかなか校内のすべての消火器と消火栓を見つけられず、引率の教員からヒントをもらいながら、校長室までやってきました。最後のミッションは「本校の教育理念を述べよ」です。どのグループも声をそろえて言うことができ、教育理念を知るよい機会となりました。
本校の教育理念は「気づき、考え、協働する看護の専門職を育成する」です。新カリキュラムを構築するときに、誰もが理解しやすく、日々意識できるような表現にしたいと教員たちで話し合って決定しました。
「気づく」には、気づけるような目、「考える」には知識や経験、「協働する」にはコミュニケーション能力などが必要となります。これから学んでいく中で、それぞれが「気づき、考え、協働する」とはどんなことかを理解し、そして経験しながら成長していくことを願っています。
令和5年5月 公立西知多看護専門学校
校長 鰐部 貴久美
「ここらぐルーム」
本校には、月に2回ほど「こころの相談室」としてカウンセラーの先生が来ます。対人関係や学習面などの悩みごとを話したり、相談したりできる存在です。
昨年度から、ご縁があり看護師でありながら公認心理師の資格を持った先生が来てくださっています。先生は看護師でもあるため、より看護学生ならではの学習や実習などの悩みや躓いたときに心の支えになってくださっています。時には、私たち教員の学生への関わりの悩みについても相談にのってくださり、本校にとって心強い、そして大変頼りがいのある先生です。
相談日には、学生たちが気軽に足を運んで先生とお話ができるようにしたいと思い、年度初めには顔合わせを兼ねて、自治会行事へ参加していただき、コミュニケーションをとる機会を作ってきました。しかし、相談室を訪れるときは、悩みが深刻になっていたり、教員から勧められて相談室へ向かうことが多く、もう少し保健室のように気軽に行ける相談室にしたいと思っていました。
ある日、学生から「こころの相談室って聞くと、心が病んだ人が行くところのイメージだ」と意見が出ました。そこで、親しみのあるネーミングを募集してみました。カウンセリングの先生の名前を使ったネーミングなど、多くの応募がありましたが、最終的に心が安らぐという意味合いを持った「ここらぐルーム」に決定しました。
相談室のドアには、絵心のある教員がかわいらしいイラストで素敵な看板を作ってくれました。彼氏とうまくいっていない話をして、「なんてちっぽけなことで悩んでいたのだろう」と笑って相談室から出てきた人もいます。今後もちょっとした相談や雑談でもよいと思うので、学生たちが気軽に行けるような「ここらぐルーム」にしていきたいと思います。
令和5年6月 公立西知多看護専門学校
校長 鰐部 貴久美
「里帰りデー」
毎年恒例の「里帰りデー」を6月12日に実施しました。今春卒業した卒業生が「ただいま~」と元気に来てくれました。ほとんどの卒業生が母体病院に就職していますが、新卒者の研修以外にはあまり顔を合わせることがないとのことで、玄関から久しぶりの再会を喜ぶ声が、聞こえてきました。
昨年度と同様に近況報告を受けました。多くの卒業生が、自分が成長したと思うこととして「検温やケアなどが一人でできるようになってきた」と言っていました。
本校に限らず、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、実習が臨地でできなかったり、途中で中断したりして、新人看護師の実践力の低下が言われるようになってきています。新人看護師を受け入れる病院や施設も新人教育をいろいろ工夫されていることでしょう。そして何よりも日々関わってくださる先輩看護師の温かい指導や支援が、成長や一つ一つの自信につながっていると感じました。
働き始めて2か月を過ぎ、つらいことも経験したのではないかと思います。そんなことも話せる時間を作りたいと思っていましたが、迎えた教員たちが忙しく、ゆっくり話をする時間が取れなかったことが反省点です。
今後もつらくて話を聞いてほしいな、と思った時にはぜひ来てください。ちょっと勉強に図書室を利用したいとき、看護技術の練習をしたいときも気軽に学校に来てくださいね。
そして里帰りデーに参加できるようご配慮いただいた就職先の皆様に感謝申し上げます。
令和5年7月 公立西知多看護専門学校
校長 鰐部 貴久美
「気づき、考えることを見守る」
先日、久しぶりに1年生の看護技術の授業のお手伝いに入りました。その日は「事例を基に清潔保持に関する安全、安楽な援助」についての演習でした。学生へ提示された患者さんは、90歳の水谷ツヤ子様(仮称)で、右脳梗塞のため左半身麻痺(ヒップアップ可)があり、難聴のため耳元で大きめの声で話すことが必要な方でした。学生は、水谷さんに清潔を保持する看護援助とその手順を考え、実際に実施する授業でした。
当日は、ほとんどの学生がおむつ内で尿失禁をしている水谷さんに、清拭(体ふき)と陰部洗浄、寝衣とおむつの交換が必要であると考えていました。そしてそれらの援助を負担がかからないよう配慮しながら安全に実施する方法を手順書に書いてきていました。
私は、1つのグループを担当し一緒に考えながら演習をすすめていきました。「清拭」「陰部洗浄」「寝衣交換」というひとつひとつの看護技術は、すでに演習して学んでいるものの、それらを複合的に、そして左半身麻痺を意識しながら実施するための流れや方法を考えることは、1年生の学生にとっては難題となります。それぞれが考えてきた手順書を確認しているうちに、お湯の温度は冷めていき、患者役の学生からは「寒い」と訴えられてしまったり、緊張のあまり患者さんへの言葉がけの声が小さくなってしまい、「聞こえない」と言われてしまったり、とまさに悪戦苦闘している様子でした。そんな中でも、グループみんなで「よく考えたら、上の寝衣は、背中を拭いた後に着ていただけば、もっと体位変換の回数を減らせるかも」など、まさに「やってみて初めて気づく」という良い意見が出てきていました。
それぞれが1回ずつしか経験できませんでしたが、やはり患者様へ安全で安楽な援助を提供するには、事前に手順や留意点を把握すること、実際に行ってみて、より良い方法へと修正していくことが大切であることを学んだことでしょう。
学生たちが困っていると「こうすればいいのよ」と言いたくなったりもしましたが、「気づき、考える」ことを見守ることの大切さを改めて実感しました。そして一緒に考えながらの演習を通して、1年生の看護に対する新鮮な思いを感じることができ、楽しく貴重な時間となりました。
令和5年8月 公立西知多看護専門学校
校長 鰐部 貴久美